好きなことの話

好きなことの話をします

青森に行った話

ゴールデンウィークには青森に行くことにする。青森のことを何も知らない。

青森県立美術館には奈良美智の「あおもり犬」という彫刻がある。青森県立美術館は建築が面白いものことでそれを見てみたかった。それ以上の行きたいところ等は特にない。弘前の桜まつりは有名だそうだが今年は開花が早く、お祭りが始まる前に満開になってしまったとのこと。ゴールデンウィークには当然葉桜だ。

 

・旅行の三日ほど前、フォロワーとの通話中うっかり「新幹線の中でワンライでもするか……」と言って言質を取られる。

・「六さんが泊まるホテルを当てよう」と言って、「一人だし泊まるところにそんなにこだわりはないはずだからビジネスホテル」「駅近を重視するのでは?」「アパホテルは社長の顔があちこちに印刷してあって嫌」「あ、このホテル朝食会場から海が見えるのいいね」と的確な推測をされた末に正解されてへんな笑いが出る。理解がすごい。

 

・新幹線の30分以上前に東京駅に着く。前日新幹線の改札が激混みで通るだけで15分かかったと聞いていたのだが、待たずに入れた。

・新幹線のeチケを初めて使う。ICカードを事前登録しておくと改札を通れる……?本当か……?とドキドキしながら通る。ふつうに通れる。

・新幹線は格好いいなあ。

・しかし、自由席がない新幹線って、万一指定席買って便を逃したらどうしたらいいんだろう?あと、うっかり乗り過ごしたらどういう扱いになるんだろう?

 

・タクシーで青森県立美術館へ。タクシーの運転手さんはおそらく私の声をほとんど聞き取れていない。濃いピンクの八重桜がたくさん咲いている。

・めっちゃ並んでる……と思ったら庵野秀明展の列の模様。先にご飯を食べて八角堂(森の子)とあおもり犬を見る。どちらも思ったよりかなり愛らしい。あおもり犬に尻尾があるか確かめるために後ろに回ったが、そもそも後ろ足がなく上半身だけを地面からぬっと出しているかたちなので、よくわからない、とりあえず描写はされてない、ということがわかった。

・丘の上に建ってるのかな?構造がよく分からないが、丘を削り取った内側や高い壁が聳える通路や狭い階段を歩き回り、なにやら遺跡の中を歩いているような気持ち。というか、ICOとかワンダとかそういうタイプのゲームの中っぽい……制作スペースらしき巨大な空き地とか、なにかがいた痕跡という感じ。広いのに見通しが悪いので、角の向こうではしゃいでいた子供が突然現れた(ように見える)私を見てスン……となる、という場面に3回くらい遭遇する。

・もう遺跡の方に行っちゃおうかな……とも思ったが、観念して列に並ぶ。ちいかわのラッコ師匠も「迷ったら並べ、地面を見ながら半歩ずつ前に出れば気がついた時には順番が来てる」って言ってたし……

・地面じゃなくてウィキペディアK2を交互に読みながら進む。庵野秀明のこと何も知らない。エヴァのテレビ版とシン・ゴジラは見た。

・スタッフの制服がミナペルホネンでかわいい。

奈良美智の彫刻というのか、立体作品がなかなかよかった。木とトタン?の小屋の中に彫刻作品やドローイングが飾られている。覗き込むという動作を強いられる。

・青秀祐「Flammable Box」、巨大な四角い風船のようなものがほとんど部屋いっぱいに詰まっていて、真っ赤な地に白抜きで「火気厳禁」と書いてある。実際に可燃性のガスかなにかが入っているのだろうか?そのあたりはよくわからない。なんとなく気になってしばらく見た。

・通年展示のシャガールもよかった。バレエの舞台芸術に使用された巨大な絵。馬と歪んだ燭台。

 

・三代丸山遺跡まで歩く。縄文時遊館という博物館のようなものから遺跡に入れるようになっている。地層を模した外装がいい。

・バスの時間が近くて遺跡を早歩きで見て回り、展示のところは見られなかった。出土品とか見たかった……

・遺跡はなんだか無闇に気持ちのいいところ。緩やかな起伏の中にぽつぽつと再現された竪穴式住居や高床式住居や柱、遺跡を保護するドームが建っている。建物を縦に伸ばすのは大変だから穴を掘ってその上に建てるというのは理にかなっているな、と思う。雪が降ったらどうするんだろ。そのあたりも展示を見れば書いてあったかも。

 

・バスで新青森まで戻って弘前へ。バスが遅れてるな……まあギリいけるっしょ!と思ってバス停から駅まで走ったが、いけなかった。ICカードが使えないのを知らずに電車逃すの旅行初心者あるあるすぎる。次は40分後。ホテルのチェックイン時間をずらしてもらって、ぼんやり待つ。電話ができるなんて偉すぎるな、私……(電話に精神的な負荷を感じるタイプで、学生時代どうしてもかけないといけない電話はかけるまでに15分ほど気持ちを整える必要があったし本当に泣いていた。成長)

 

新青森駅にはリンゴジュースだけの自販機がある。

 

弘前駅から、弘前城近くの宿まで歩く。めちゃくちゃスナックがある。すごい。生きたスナックが何十軒もある。

・チェックインを「研修中」の札をつけた若い人がやってくれたのだが、隣のカウンターで「紹介された店に行ったが混んでいて門前払いされた」とクレームをつけはじめた人がいてお互いそっちに気を取られて話が進まなかった。がんばれ。

 

・「まわりみち文庫」へ。飲み屋と飲み屋の間にある。『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』(野村日魚子)を買う。古本の棚の『戦争で死ななかったお父さんのために』(つかこうへい)をめくったら「初級革命講座飛龍伝」が入っていたのでそれも買う。やったね。

 

・目をつけていたお店が満員だったので次に目についたお店に入ったら完全にバイブスが合わず、スン……とした顔で食べて出た。

・酒が飲めないと一人旅の夜ご飯はむずかしい、居酒屋というのは基本的に23人前が一皿で出てくるし。

 

・翌日、弘前さくら祭りを見て回る。ソメイヨシノの緑がすごくて、これは満開の時期はさぞきれいだろうとちょっと残念。しかしあちこちに八重桜が美しく咲いていて、広くて、気持ちがいい。なにより岩木山がすごくきれいだ。りんごのシャーベットを食べる。

・ステージの方に行くとなにかロックバンドが演奏している。ボーカルの女性がなんだか上手い。途中「オトナブルー」をやり、サビのところはちゃんと(?)バンドメンバーが歌い出したのがなんだか良かった。とうもろこしの天ぷらを食べる。

 

・藤田記念庭園からも岩木山がよく見える。水琴窟に耳を澄ませる。

・東屋に座って、ここでなくてもいい、ということを考えた。青森に行くのだと言うと、誰もが「へえ、何を見に行くの?」「何があるの?」と尋ねてきた。

・私は歴史にかなり疎くて、城はみんな同じに見える。庭園もみんな同じに見える。だからたぶん、ここにしかないもの、というのはない(私にとっては)。私にしかできないことというものがないように。

・しかし、私にしかできないことがなくても、私が毎日仕事や生活をしているというのと同じように、ここでしか見られないものがなくても、ここに来てよかったのだ。

・滝のそばの橋で、外国人観光客たちがはしゃぎながら写真を撮っている。

・喫茶室に入ろうとしたら28組待ちで諦める。タムラファームのアップルパイだけ買った。

 

弘前といえば洋館が有名らしい。旧弘前図書館に入る。赤と白の外観がとってもかわいい建物で、中に入ると黄色い天井とうす緑色の窓枠がおしゃれだ。こういう建物を見る時、自室にするならどこかなというのをいつも考えてしまう。「婦人閲覧室」と「普通閲覧室」が分けてありへえと思う。

・続けて隣の洋館にも入る。こういう古い建物の天井が低いのって、やっぱり昔の日本人の平均身長が低いからなんだろうか?

 

・その辺のベンチでタムラファームのアップルパイ。しっとりどっしり系で、スタンダードなアップルパイに求められているものがしっかりあって満足。高校生がきゃあきゃあはしゃぎながら通り過ぎる。

 

弘前れんが倉庫美術館へ。大巻伸嗣という知らない現代作家のインスタレーション展示をしている。これが……かなり……よかった。

・「sink」暗い部屋の天井に穴が空いていて、そこからやや大きめのシャボン玉が落ちてくる。シャボン玉の中は煙で満たされている。空中でまたは床に落ちて割れると、煙はふわっと広がり、ゆらぎながら拡散し、消える。その煙のかたちの一回性、再現性の無さ。煙が消え切ったところでまたひとつ落ちてくる。その繰り返し。ずっと見ていられるかもしれない。

・「Liminal Air Space-Time:事象の地平線」これも暗い、広い部屋に、薄くて透ける素材の巨大な布が広げられている。部屋の奥から風が吹いていて、布は何かの生き物のように、あるいは寄せては返す波のように、静かな幽霊のように、ゆっくりゆっくりたなびいている。私たちに手を伸ばしてくるようにも見える。しかしけっして触れることはなく落ちて下がっていく。また手を伸ばしてきては、触れられずに下がってゆく。光源はライトが二つだけで、布はそれを反射してゆらめきながら光っている。自然現象のようにも見えるが、常に流れている女性の声の歌詞のないコーラスがそれを裏切って、あくまで人間がしていることだということを示唆している(ような気がする)。吹き抜けになっていて二階からも見ることができる。そちらからだと波のようなひらめきのほうが印象として強く、「手を伸ばしてくる」のような擬人法を用いたことが遠くなり、現象として見ることができるようになる。

ミュージアムカフェの入り口に立って、あっこれはなんか、予感がする……と思ってぱっとみたら「エーファクトリー」と書いてあって「ほらね」と思いました。何が「ほらね」なのかよくわからんが。

 

弘前城に戻って荷物を取って駅へ。いいとこだなー弘前城。離れがたいような気持ちすらする。

・すれ違った親子の会話:「これをずーっと昔の人が作ったんだよ」「ずーっとむかし?」「ちょんまげしてるくらい昔の人」「えーっ!ちょんまげー!?」「ちょんまげ嫌い?」「はるかはねえ……ハートが好き❤️

 

・おすすめされていた「ボンジュール」のアップルパイを買ってから電車に乗って青森駅へ。あっこれ発車ベル? 郷土音楽を流してるやつかと思ったわ……

 

・夕食。昨日の反省を生かしてGoogleマップで何箇所か目星をつけたものの、10組待ち、満席、臨時休業、5組待ち、19時ラストオーダー、で惨敗。もうあとはさっき見かけた味噌カレー牛乳ラーメンしかねえ!と向かってる途中で見つけたお店に入る。なんていうか……おしゃれというか……気取った感じの……コンセプト重視の……地元とか愛してなさそうな……でもまあ貝焼き味噌を食べれたのでよし。ごはん味噌汁セットがあったのがありがたかったのでよし。

・一人で下戸の人間って本当に晩ごはんどうしたらいいんでしょうね?回転寿司かラーメン?定食屋、せめて20時までやっててくれ。

 

・夜に喫茶店に行くのが好き。しかし21時までやっている喫茶店は少なく、またやっていると書いてあってもバー営業のことが多い。結局駅ビルの中のスタバに入ってぼうっとする。

 

・部屋でカリオストロの城を見ながらボンジュールのアップルパイを食べる。うわーっおいしい……!パイが軽くてパリパリ、りんごも軽い印象でバランスがいい。タムラファームのとはかなり違う。これは美味しいな、おすすめも納得です。

 

・夜中に地震がある。ホテルの建物が古いせいか、揺れ止まないのではないかと思うほど長い。石川の地震のこと、観光地で不安そうにする人々のことを考える。

 

・翌朝。雨。朝食バイキングでパン・サラダ・スクランブルエッグ・ベーコン・ヨーグルトの完璧な盛り付けをして食べたあと味噌汁だけ持ってきて飲んだ。自由だから。

 

二度寝して、早めに青森魚菜センターへ。好きな具材を選んで海鮮丼を作れるというやつ。た、たのし〜〜〜〜〜。白身魚が好きなので白身魚ばっかりになり嬉しいけどめちゃバランス悪かった、どれかを抜いて卵焼き乗せればよかった。でかい海老とホタテも美味しかった。

・隣の女の子二人組がこれからの旅程の話をしているが、なんだかこれから弘前のりんご公園に行って奥入瀬渓流にも行って十和田市現代美術館に行って道の駅でご飯食べて新幹線で帰る……みたいな話をしている。それはけっこう無理なのでは……大丈夫か?とハラハラしながら聞き耳を立てているといややっぱり弘前はやめようという話になる。お姉さんもそれがいいと思うよ。逆だもん、弘前

 

・エーファクトリーで青森在住フォロワーと待ち合わせ。青森土産をもらい、東京土産を渡す。

・「なんで青森だったの?」と聞かれる。本当に全員それを聞いてくるな。地元のことって知らないよねー、という話をする。しかし青森・弘前はかなり観光地としてやっていく気概がありますよ。知名度とアクセスしやすさにあぐらをかいている横浜も見習った方がいい。

ジェラートを食べて近況など話して別れる。D&D、面白いらしい。セクシーパラディン。紅玉とミルクのジェラートがうまい。

 

・ねぶたの家ワ・ラッセへ。ねぶたのことを何も知らなかったのだが、実物を近くで見るとたしかに見事で面白かった。琉球の神話をモチーフにしたねぶたがすごくて、魚の一つ一つが踊るよう、見る角度によってさまざまな発見があり見飽きない。立体は立体で見ないといけないですね。ステージのお兄さんたちが盛り上げてくれる。

 

アスパムでアップルパイを買う。これは新幹線の中で食べる分。ストリートピアノで「幻想即興曲」を弾いてる人がいるがタッチが浅くて音がだいぶ飛んでる。

 

・海沿いを散歩したかったが、雨風がすごい上傘が折れてしまい断念。埠頭まで行ってみたかったな。

・なぜかは思い出せないが行きたいリストに入っていたカフェシュトラウスへ。ウィーン菓子のお店ということで、売り切れていたアップルシュトゥルーデルの代わりにザッハトルテを頼む。ケーキ単品で食べたらあらすごく甘いわねという感じなんだけど、甘くない生クリームたっぷりで食べるとめ〜〜〜〜っちゃうまい……なに? これ……め〜〜〜〜〜っちゃうまい……呆然としていると隣の席でも「おいしいね……」「おいしい……」「すごいおいしいわ……」しか言えなくなっている人がいる。ほんとね……

 

・街路樹がりんごの木で、白い花びらが雨風でどんどん散っていくのが美しかった。

・駅のお土産屋さんで味噌カレー牛乳ラーメンのインスタントを見かける。有名店だったのか。

 

・余裕を持って新青森へ。駅弁って初めて買ったかもしれない。

・新幹線の中、あきらかに革製品の匂いが充満してるんだけど、何?誰かなんか鞣した?

・新幹線のWi-Fiは全然役に立たなくてかわいいね。

 

・仙台を過ぎてしばらくしたころ、フォロワーから「六さんインターネットののすがた」の絵が送られてくる。何を言ってるのか分からないかもしれませんがほんとうなんです。

・いい絵だったので、え〜ありがとうございます、と返信しかけて火がつき、一時間弱でその絵から着想した1700字ほどのショートショートを書いて、大宮を過ぎたあたりで返信する。

 

・東京に着くなり、電車から降りるより先に乗ろうとする人、寝たふりをして隣の女性に寄りかかろうとする男、頭から浴びたんかくらい酒臭い酔っ払い、などに遭遇する。ふん。

 

 

・ここからは心残り。

 

・つばめ喫茶室:弘前のかわいい喫茶店。行動圏内からやや遠くて、タクシー使ってもいいけどもし満席だったらショックだな、と断念。かわい〜んですよ。

弘前公園植物園:歩き疲れて行けなかった。いいところらしい。弘前城天守閣と藤田記念庭園との3施設チケットを買ったので全部回りたかった。

弘前アップルパイマップみたいのをもらったのだが売り切れ等もあり結局二つ(プラス青森で一つ)しか食べられなかった。もっと行けたはずだ。

・かわいいシードルとかクラフトビールがいっぱいあった。酒が飲めればな。

・雨風が強くて青森の街はほぼ歩けなかった。もうちょっとウロウロしたかった。

・八戸にも行きたかった。八戸ブックセンターがいいらしい。