好きなことの話

好きなことの話をします

ムーンライトノベルズの話

 ムーンライトノベルズというのは小説家になろうの中でも18歳以上女性向けの小説投稿サイトである。ちなみに男性向けR-18作品はノクターンノベルズ、R-18G作品はミッドナイトノベルズと住み分けがなされている。
 インターネットで創作を公開している人が「ストレス解消にエロ小説を書いた」と言ってものすごい分量のBL作品を投稿しており、ストレス解消にエロを書く(描く)という発想はなかったな……てかエロって書いたことないな……自分もやってみるか!と思ったのが始まりで、記録を辿ると2022年の8月半ばに検討を始め、その一週間後くらいに最初の部分を投稿している。私にしては話がめちゃ速い。
 とにかく勢いで書き始め、1ヶ月に1回更新を目標に投稿して2023年3月に一旦完結した。やっているうちに「主人公カップル、全然セックスしそうにないな……」となったのでR-18部分は番外編でやることになった。おかしい、私はエロ小説を書くはずだったのに……
 やっていく中で色々な気づきがあり面白かったので記録する。

 

・アマチュア小説における"ナーロッパ"
 どんな話にするか……とムーンライトノベルズのランキング上位のタイトルをざっと眺め、むちゃくちゃ大きく分けて「ファンタジー/異世界」と「現代日本」のどちらかが舞台であることが多い、と考えた。
 自分で書くことを考えた時、現代日本は無理だなという確信があった。気恥ずかしすぎる。ある程度自分から離れたところのほうが書く方も読む方もロマンスに集中しやすい気がする。たとえば同じ俺様系上司ヒーローでも現代日本が舞台だと「このモラハラ野郎が、ヒロインちゃんから離れろ、ヒロインちゃんも人権侵害されとる場合か!?はよ転職しろ!!」と思ってしまうが、異世界ファンタジーなら「このモラハラ野郎がよ、でもまあ異世界ですからね……価値観が違うんですね……」と比較的心穏やかに読める。俺様キャラはまったく好みではないので読みませんが……
 でも異世界ファンタジーかあ、そうすると世界とか魔法とか国とか民族とかの設定を決めなくちゃいけないんでしょ、かったるいし知識もないし……と考えたところで気づいたのである。読者が望んでいるのはロマンスとエロであって、緻密な世界設定や独創的な魔法バトルではない。最低限の設定だけしてあとは「まあいわゆるファンタジー異世界ですよ」でいいんじゃないか!?
 いわゆるナーロッパ(小説家になろうにありがちな、ゲームや漫画の知識だけを下敷きにした"中世ヨーロッパ"風異世界)は批判されることも多いが、アマチュアの書き手/読み手にとってはメリットがある。趣味で書くだけ/読むだけで、書きたいところではないのなら、べつに決めなくても構わないのだ。ファンタジー好きに怒られそうな話ではある(リムれよ❤️)。
(もしかしてだけどこういう話とか分析ってもうされきってますか? まあ私は私の話をしますね)
 とはいえざっくり魔法と国の設定だけは決めたが、あまりにもざっくりしすぎていたので後半かなり苦労する羽目になった。ぜんぜんわからない、俺たちは雰囲気で異世界ファンタジーをやっている。

 

・プロットを決め切らずに書き始める、という方法について
 普段はコンセプトとプロットをしっかり切ってから書き始めるのだが、今回は完全に見切り発車だった。冷静になったら恥ずかしくなるに決まっているからだ。
 最初と最後だけざっくり決めてあったのだが、「こうなったら次はこうなるはず」「そろそろ次の問題が現れてほしい」「二話に一回はいちゃつかせておかないとな……」「そしたら次はこうなるはずで……」「やべ、ヒーローに見せ場を作らないと」とやっているうちにだいぶ思っていたのとちがう話になった。おかげでタイトルと内容が乖離している。
 もうちょっときれいに話を作れたらよかったなとか、盛り上がりにかけたなとか、テーマと解決が微妙に噛み合わなかったんだよなーとか、出てきたっきり活躍しなかった登場人物がいるなとか、反省点は多々あるのだが、次はどうしようかな?と考えるのはなんだか子供の頃の人形遊びのようで楽しかった。

 

・最短距離を取らなくてもいい
 コンセプトとプロットを固めてから書き始めるせいかもしれないが、とにかく最短距離を進むのがいいと思っていた。短ければ短いほどよい、より少ない文字数でより多い情報を伝えるのがよい文章だ。
 その思いは変わっていないのだが、ロマンス・エンタメをやるにあたって、本筋にはいらない情報でもあったほうがよいという気づきがあった。いわばキャラ萌えだ。
 たとえば、完全にどうでもいい情報として、脇役のおじさんが実は年上の妻にぞっこんで毎週花を買って帰る、というエピソードを挟んだ。本筋にはまったく関係なく、なくてもいい情報だが、おじさんの好感度を上げるためだけに書いた。
 エンタメではこういうことをしてもいい。というかむしろ、そういうキャラクターの良さこそ、エンタメを読む時の喜びだったなと思い出した。

 

・萌えと向き合う/キャラクターが物語を作る
 どういう話にしようかな、どういう主人公カップルにしようかな、と考えた時、自分の萌え/萎えと向き合うことになった(萌え・萎えって死語ですね、たぶん)。
 女性のほうはあっさり決まったのだが、これまで基本的に女性の話をメインに書いてきて、男性キャラクターへの萌えが整理されていなかったことに気がついた。自分と向き合った結果「腹黒じゃない・Sじゃない・年下じゃない敬語」という結論に達した。そ、そうなんだ……知らなかった……
 同時に自分の萎えポイントも整理された。男性が完全に優位なのは嫌、女性にもなんらかの形で優位な面があってほしい。身分でも年齢でも精神面でもプレイでも構わない。愛されスタートであってもどこかのタイミングで主体的に相手を選んでほしい。自我よあれ。あと、未成年だったり女性側にまったく性の知識がないやつもできないなと思いました。
 女性向けエロで人権が侵害されてるやつよくあるじゃないですか(あるんですよ)まあそれがエッチだからというのは分かるんですけど、私としてはどうしても「人権を手放すな」という気持ちになってしまう。「お前人権を軽視しといて何が愛じゃ」と気が散ってしまう。公平、対等、大人同士の関係の話もやればできるのでは。ということで、コンセプトに「やたら合意を取る男」を追加した。
 で、やたら合意を取る男になったことで、やっぱり全体的に正しい話にしないといけない、という方向が見えてきた。だめなところや失敗があったとしても、誠実であろうとするキャラクターでなくてはいけない。理不尽があれば怒ること、子供を守ること、非があれば謝ること。
 そのあたりがプロットにも影響してきて、そうかー、キャラクターが物語を作るってこういうことかー、と思いましたね。二十年近く小説を書いてきたのに?今更?ウン……

 

・脳内倫理委員会
 さっきも書いたんですが、エロって人権を侵害しがちなんですよ。ていうかそもそもセックスって侵襲的な行いで、暴力性とかなり結びつきやすいですよね。あくまでエンタメでファンタジーで18歳以上しか読まないので、エッチだからという理由で暴力的なことをしてもいいといえばいい。最初に「これはあくまで創作であって推奨しているものではなく、実際には暴力や人権の侵害は許されない」と注意書きを入れるのもいいかもしれない。
 いいけどさ〜。せっかく好きなタイプの女と好きなタイプの男がいちゃいちゃするとこを書くんだからなんの心配事もなく見てたいよ……。ということで脳内倫理委員会の言うことにはまあまあ従った。それでもあとから読み返すと「ここちょっと急だったな」とか「もう一段階踏んだ方がよくない?」と反省もある。

 

・アクセスが……ある!!
 ここでちょっと私の一次創作小説のアクセス数を見てみよう。

 ちなみに二次創作でもこう。(右端がPV)

 需要のないものばかり書いてきたのでそんなもんだろうなと思っていた。それが!ムーンライトノベルズだとこう!!

 文字通り桁が違う。目を疑いましたね。まあ文字数というか投稿数が違うんだけど、それでもなお……すごい。びっくりした。人々のロマンスとエロを追い求める気持ちよ。
 ちなみに言っておくと弱小なのは全くかわりなく、ランキング等とは無縁です。総合評価300ポイント、ブクマ数83。(ランキング上位がどのくらいかと言うと、今週の一位は15000ポイント4500ブクマくらい)でも二十年ちかく小説書いてきてこんなん見たことない(それは弱小すぎるかもしれない)。
 どうやら小説家になろうとその系列ではタグで網を張っていて全部読むというユーザーがそれなりにいるらしく、タグを増やすとかなりアクセスが増える。R-18回を投稿したあとおそるおそるタグ「甘々」を増やしたらドッと増えたのでひえーと思った。
 あとR-18回を投稿すると明らかにアクセスが増える。ムーンライトノベルズではR-18回にはサブタイトルに米印をつける等してわかりやすくするという風習があるのだが(わざわざ「米印はR-18回ですので苦手な方はご遠慮ください」と書いてる人もいる。苦手な方はムーンライトノベルズには来ないんじゃない!?)それをすると明らかに増える。米印だけ拾って読む人とか、米印だけ読んで文体を確かめる人とかがいるようだ。わかる〜エロで一番萎えがちなの文体だから先に確かめたいよね〜。
 アクセス数ってつかないのが普通だと思っていたので、場所と題材かあ……と思ってびっくりした。あと実際いいねがつくと読んでる人がいるならがんばろうかなという気にもなるものですね。皆そんなこと言ってるけどあんま信じてなかった。みんな、いいねとブクマを押そう。

 

 普段の一次創作では「お前をお前をぶん殴る」という気持ちでやっているのですが、あくまで自分の楽しみのためだから上手くなくても新規性がなくても突っ込みどころがあってもいいと思うと肩の力が抜けて、とても楽しく書くことができた。べつにR-18でなくてよいからまたやりたい。

 

またなんか思い出したら追記します。