好きなことの話

好きなことの話をします

ばけむこを読んでくださいという話

「ばけむこ」という漫画がある。

‪ばけむこ - 枝屋初 https://comic.pixiv.net/works/3755 #pixivコミック‬

 神隠しに遭った高校生・赤手葬太郎は、雨の止まない座敷で不思議な美女に迎えられる。美女の名は銀書姫、その正体は大なめくじ。人間の婿を迎えるために葬太郎をさらってきたのだという。しかし、葬太郎は訳あって男装して過ごす女性だった。婿入りを断りかける葬太郎に、銀書姫は「我が男になればいいだけだ」と性別を変えてみせる。雌雄同体、どちらにもなれる銀書姫/書銀と、自分が男なのか女なのか分からない葬太郎、二人の奇妙な結婚生活が始まる……というのがあらすじ。

 性というのは人間が太古の昔から扱い続けたテーマなので、無性、中性、性別転換、選択制と、さまざまなパターンの性を持つキャラクターの恋愛が物語られてきたと思うが、これもなかなか複雑なパターンなのではないかと思う。

 とにかくその性別の扱い方が絶妙に良い。オタク的な物言いをすれば、男女CPとしても男男CPとしても女女CPととらえてもOK、あまりにも自由。書葬、葬銀、銀葬、葬銀、どれでもOK、カプ厨には夢のようだ。

 冗談はともかく、二人は男とも女ともつかず、ときどきに立ち位置を婿/妻と変えながら、徐々に好意を深めていく。しかしそれは決して、性別なんてどうだっていい、と言っているわけではない。男神である書銀と女神である銀書姫は同一人物でありながら微妙に性格が違うし、葬太郎は女が短命な家系に生まれて赤い夢を見続け、女にさえ生まれなければとも思っている。

 私はいつも思っているのだけれど、男女なんて関係ないよね、と、本当は言いたい。「女の子だからこうなんだね」なんて言われたら怒ってしまう。愛にも、人生にも、男女なんてほんとうは関係ない。でも、性別に意味がないわけでは絶対ない。女に生まれなければ、男に生まれていたら、今私はこういう性格になっていただろうか? この姿でなかったら、全く違う人生を歩んでいたのでは?

 余談だが、私は二次創作における性別転換が苦手である。たとえまったく同じ性格でも、周りからの扱われ方や体の作りというのはやっぱり人格に影響を与えるのだから、男女が違ったらそれはその人ではないのでは、と思うからだ。女の子だからこうなんじゃなくて、女の子として生きてきた結果こうなった、ということで、その間にはやっぱり深い溝がある。

 葬太郎と書銀は、性別という呪いに抗い、"普通"でない姿を許し合いながら愛を深めていく。その結実点のひとつである二人の床入りのシーンは必見。なめくじと人間がどうやって……と思いましたか? 直接的な描写はほとんどないのだが、私は普通に赤面してしまった。二人のつながり、二人の身体を許していくということの美しさとエロチシズムが存分に表現されている。

 付け加えて、デッサンはあまり上手くないが、絵、コマ割り、構図が素晴らしい。植物や文様がコマごとにちりばめられ、凝った構図のページが続く。特に2話の間取り図がコマになって進んでいくシーンがすばらしいので、そこまでは読んでみてほしい。2話までは無料です。構図にこだわりのある漫画が好きな人はきっと気に入ると思う。

 いまなら単行本2巻が出たばかりですぐ追いつける!1話・2話・最新話はpixivコミックで無料で読める!Kindle版もある!よろしくお願いします!

ばけむこ 2 (BLADE COMICS pixiv)

ばけむこ 2 (BLADE COMICS pixiv)

ばけむこ 1 (BLADE COMICS pixiv)

ばけむこ 1 (BLADE COMICS pixiv)