好きなことの話

好きなことの話をします

年末年始が好きな話

 年末年始は好きですか。私はかなり好き。
 まずクリスマスが好き。雑貨屋さんやお菓子屋さんを見て回って、会いもしない友人あてのクリスマスプレゼントを探す。実際にクリスマス周辺に会う相手がいたら、ちょっとしたプレゼントを買っておく。いい匂いのせっけんとか、ただひたすらにパッケージがかわいいだけのお菓子とか。今年は友人たちと持ち寄りのクリスマスパーティーをして、一人二千円までのプレゼント交換をやったので、私はたいそうはりきった。悩みに悩んで、アイスクリーム専用のスプーンと、ハーゲンダッツのギフト券にした。友人からはアルガンオイルと葛湯をもらった。わたしたちはもう自分でパーティーができるのだ。
 それから仕事納めが好き。社会人二年目なので、まだ二回しかやっていないのだが、あんなに気持ちのいいイベントがあるだろうか。前日までに仕事をおおかた片づけて、午前中のうちに大掃除。会社のおごりのお寿司を食べてビールを飲み、よいお年をと言ってオフィスをあとにする。おととしは心の赴くままに上野まで行ってアメ横の人だかりに揉まれ、ミスドでお茶を飲んだ。去年は新宿のブックファーストで吟味に吟味を重ねた衝動買いをした後、英国屋でケーキを食べた。買ったのは雪舟えまの『凍土二人行黒スープ付き』。これが本当に正解だった。
 お正月の準備も好き。我が家ではおせちを作るのだが、今年は祖母の家で年越しをするのでそんなにたくさんのものは作らなかった。人参を梅の飾り切りにした煮物、スモークサーモンと大根のマリネ、栗きんとん。野菜を刻むのは楽しい。子供のころ、玉ねぎをむいたりコンソメのパッケージをはがしたりしかできなかったころ、包丁は憧れだった。今でもたいしてうまくは扱えないけれど、手を動かして刻んでいると、料理をしている、という満足感が広がってくる。
 年越しはたいしたことはしない。年越しそばにのせるのはニシン、というのは我が家だけの風習だと初めて知った。紅白を見て、2355年越しスペシャルで年越し。あけましておめでとうございます。寝る。
 起きる。私はお雑煮も大好き。本当は正月以外も食べたい。おせちをつまんでだらだらする。子供のころは、大晦日と元日にははっきりとした差があって、世界じゅうがぱっと明るくなるような気がしたけれど、今日は昨日の続きだなあ、と思いながらポケモンGOに出る。冬なのにあたたかいせいかもしれない。ポッポを捕まえまくるが、メタモンは出ない。
 何日かはおせちやお餅を食べているけれど、父がふいにホットケーキを焼く。カレーも食べる。それから仕事初め。会社の人たちと初詣に行って、まるっきり忘れてしまった仕事の続き。新宿で食べたケーキはとても遠い気がする。成人の日が終わるころには、正月気分は抜けている。私はコーディングをしたり、つまらない書類を作ったり、営業の電話をあしらったりする。セールのうちにセーターを何枚か買う。
 そういうわけで、私の年末年始は終わる。
 仕事は嫌いじゃなく、ありがたいことにたいした不満はない。でも、この世に仕事納めがあってよかった。夏休みの始まりとも、ゴールデンウイークの始まりともまた違う、あの高揚感が、もう恋しい。