好きなことの話

好きなことの話をします

女の子が好きな話

女の子が好き、と私が言うとき、思い出す女の子が二人いる。

一人は高校の同級生で、演劇をしたり映画に出たり写真のモデルをしたりしている。色が白くて姿勢が良く、二重をテープで作っている。私が彼女を知った15歳のときから9年、彼女は髪を切って二重になってまつ毛を倍の長さにしてニーハイを履くのをやめた。9年前の彼女と似た女子高生を見つけると、この子が、ああなる、と感慨深い気持ちになる。彼女はその顔を自ら選び取った。本人は、自分のすっぴんはチャン・カワイに似ているというけれど、それがいったいなんだろうか。彼女が選び、作り上げたその人生に比べたら。

もう一人とは二度しか会ったことがない。一度目は新宿のカフェでケーキを食べながら就活の話をし、二度目は嵐山のカフェでケーキを食べながら元恋人の話を聞いた。二度目のとき、空になった皿を前に沈黙が降りて、私は口を開こうと彼女を見たが、彼女は私を見ていなかった。元恋人のことを考えているのだとすぐ分かった。元恋人は東京にいて、だから(「だから」とは彼女は言わなかったが)これから探す就職先はとにかく東京にしようと思うのだと、彼女は言った。別れ際、改札越しに、また東京でねえ、と叫んで手を振った。

私は女の子が好きだ。女の子たちが笑ったり恋をしたり喧嘩したり策略を巡らせたりしているのが好きだ。たぶん男の子も笑ったり恋をしたりしているんだと思うけれど、よく知らないのでなかなか好きになれない。

この気持ちはどこから来るのだろう。

ところで私はバカが嫌いだ。この人ー、もしかしてー、バカなのかなー、と思うやいなや心のシャッターががしゃーんと下りる。御察しの通り私はバカなのですけど、バカはバカを見つける嗅覚が鋭いのでよりバカを発見してしまい、疲れる。バカに優しくなりてえ、そして優しくされてえ、と思う。

さて、元恋人を追いかけて東京にやってきた彼女をバカと言う人もいるかもしれない。あるいは彼氏にすらカラコンを外した顔を見せない彼女をバカと思う人もいるかもしれない。不便だし。お泊まりのときどうしてるんですか?

でも、かわいいじゃん。

そうです。再び御察しの通りかと思いますが、私はこれだけで押し通そうとしています。かわいいじゃん。女の子。

愚かであることを許される時期というのはあっても、愛される時期は少ない。大体の場合バカは嫌われる。でも、多少バカでも筋が通ってなくても不便でも、女の子の目指す方向に向かう、その姿が、私には愛しい。

だって無理じゃないですか、つけまつげもアイプチもしてるのに、デートからお風呂からベッドから次の日の朝まで同じ顔でいること。でも彼女はやりとげる。そのパワーを私はとても、とても尊敬している。それをバカの一言で片付けるなんて、お前のほうが100倍バカだ。かわいくもないくせに。

私は女の子が好きだ。どうか全員幸せになってほしい。いつか女の子をやめる日が来ても、その人の女の子時代が人生をかわいく輝かしく彩ることを私は願っているし、私なんかが願わなくても勝手にそうなるということ、そのパワーこそを、私は愛している。