好きなことの話

好きなことの話をします

初めての化粧の話

高校生のとき、文化祭で映画を撮った。ヤンキーという設定の女の子たちはみな化粧道具を持ち寄って、はしゃぎながら慣れない化粧を施した。クラスの女の子たちの何人かは口紅を塗っただけで大幅に可愛くなっていて目を見張ったが、私自身については、なんに…

【SS】豆腐と永遠

え、い、え、ん。永遠?僕は思わず聞き返した。そうだよ、と高木は真顔で頷く。 「永遠って言った。今」 「えいえん」 僕の箸の下で冷奴が崩れている。背後の店員がいらっしゃいませ何名様でしょうかと叫んだ。 ドラマや映画っていうのは俺はどうしても好き…

【SS】月影

twitterでお題を募集したら長文が来たので続きを書きました。「----------」から「----------」までがお題部分です。 ---------- 櫓の下には井戸が拵えてあって、それは大抵木蓋で閉じられているものなのだが、時折町人の誰かが閉め忘れることがあるらしく、…

年末年始が好きな話

年末年始は好きですか。私はかなり好き。 まずクリスマスが好き。雑貨屋さんやお菓子屋さんを見て回って、会いもしない友人あてのクリスマスプレゼントを探す。実際にクリスマス周辺に会う相手がいたら、ちょっとしたプレゼントを買っておく。いい匂いのせっ…

【SS】ねどこ-2 楽園

死後の世界が発見されて五年になる。 そこに持ち込めるものは少ない。電子機器や、金属製のもの、革製品、それから薬品のたぐいは持ち込みを禁止されている。それぞれ、なにやら問題があるのだそうだ。だから私は、恋人にもらった時計を何年ぶりかに外してロ…

【SS】ねどこ-1 IKEA

それは不思議なアルバイトだった。眠るのだ。 いつでもどこでも寝られるのだけが取り柄の僕に仕事なんて見つかるはずないよと准教授に言ったらすぐに学生課から募集要項をもらってきたのでおどろいた、冗談を言うような人ではないので。とにかくどこでも寝ら…

【SS】クミンシード

私たちはここで別れ話をするだろう。 壁一面に作りつけられた棚には、ぴったりとスパイスの瓶が並べられている。フェイクかしらと近づいてみたら、ラベルも中身もひとつひとつ違っていて驚いた。客席は暗めの間接照明なのに対して、厨房のほうは白々と明るい…

くまとパンケーキ

パンケーキが好きな女の子がいて、私はその子をくまちゃんと呼んでいる。くまというのは本名の一部で、だからたいしたあだ名ではないのだけど、ある時手帳に彼女との約束を書いていて、「くまとパンケーキ」という字面を見た瞬間に、ぱっとその呼び方に親し…

ここ数ヶ月の仕事の話

雨にも負ける 風にも負ける 雪にも夏の暑さにも負ける ひ弱な交通手段(電車)を持ち 慾はなく(有給はほしいが) 決して瞋らず(無駄なので) いつも静かにエクセルをいじっている 一日にコンビニおにぎりと 味噌と少しの野菜(ドレッシング込み199円)(高…

「ざらざらした葛藤のメロディ」を観た話

以前短歌の関係で知り合った前田沙耶子さん(@penguin_night)という人が二人芝居をやるというので新中野まで出かけて行った。役者をやるのは初めてということで、洗練された演技、とはいかなかったけれど、少し考えることがあったので書いておく。 公園らし…

短歌作った話1(2はない)

通勤中に作ったのがほんの少したまったので置いておく。 愛も木も人も羊も爆弾も同じ大きさ絵文字上では 「さあ、光のほうを向いて」と自撮り棒手渡す君はおそらく女神 暗い部屋でタオルケットにくるまって雨の降りだす音を聞き取る 「かわいい」と性欲の重…

東京文学フリマ(春)に出た時の話

今さらかよ という声が四方八方から聞こえるんですけど、5/1文学フリマ東京に来てくださったみなさんありがとうございました。 中学の頃は文学賞を最年少受賞してあいつらを見返すことだけを考えていた。高校の頃は誰にも読まれたくないと思っていた。大学の…

高野文子「奥村さんのお茄子」の話

『棒がいっぽん』高野文子より「奥村さんのお茄子」の話をする。 一応ネタバレしない感じに書きましたが、そのぶん未読の方には何が何やら分からないかもしれない。とにかく読んでください。たのむ。これはアフィリエイトではありません。 棒がいっぽん (Mag…

葉ね文庫に行った話

大阪に住んでいたことがある。 といってもほんの1年前、たった3ヶ月だけだったので、住んだ、というには短い。初めての一人暮らしは、仕事をして勉強してごはんを作って食べて寝て起きているうちに過ぎていった。それなりに楽しく、それなりに寂しい毎日だっ…

女の子かわいい話をまとめた話

ツイッターで女の子かわいい言い過ぎでは、と思ったのでまとめました。 「かわいい女の子(たち)」をトゥギャりました。 https://t.co/Rh30EIpc1q— 六 (@69rikka) 2016年7月17日 並べると意外と少なかった。 これを見た友人に「結局君の言うかわいい女の子…

祖母の納骨

祖母が亡くなって一年になる。 そのとき私は大阪に住んでいて、訃報はメールで届いた。外部研修を終えて携帯の電源を入れたら、「おばあちゃんが亡くなりました」という母からのメールが届いていた。私は感情の動かしどころを見極められないまま同期と手を振…

『春の雪』を読んだ話

この1ヶ月に3件記事を書いたが全部自己顕示欲の塊だったので捨てた。 放置されたブログというのはけっこう悲しい光景なので、最近読んだ本の話をします。 たぶん高校生くらいのころからずっと親に三島由紀夫を勧められていたんだけど、先日初めて読んだ。 三…

【SS】親知らず

「持って帰られますか?」 わたしはぎょっとして顔を上げた。歯科医の顔はマスクに隠されて、表情が読み取れない。驚いたのを隠そうとにへらと笑った私を見て、歯科医はわたしの親知らずをつまみ上げ、「ちょっと待ってくださいね」と作業台に向かった。わた…

惚気話が好きな話

ツイッターのリストはあんまり使っていないのだけど、一つだけ「す」という非公開リストを作ってある。 「す」きなひとの話をするアカウント、である。 恋人や片思い相手の話を多くするアカウントのリストで、これを私は1日に5回ほど覗いている。見も知らぬ…

【SS】便所飯

便所飯というのは、想像するほどなまやさしいものではない。 便座に腰かけ、短く息を吐く。しっかりと閉めていた鞄からサンドイッチを取り出して膝の上に置いてから、音姫のスイッチを押す。大学の音姫は音も安っぽく小さく、あまり機能を果たさないが、音を…

機械が好きな話

「わたしの2/4拍子(ルンバ)」を読んだ。 ツイッターではまなかさん(@hmnk)が連投した、わたしとルンバをめぐる物語の書籍版だ。新宿眼科画廊で開催中の内田ユイさん個展(http://www.gankagarou.com/sche/2016/201604uchidayui.html)と5/5のコミティア…

黒猫が好きな話

黒猫の名前はコロといった。 まだ生まれたばかりのコロを、近所の子供たちがボールがわりに放り投げていたところを祖母が発見し、これこれやめなさいと浦島太郎よろしく止めて、そのまま引き取ってきた。コロコロしているからコロ、安直ながらかわいい名前を…

愛してる.comが好きな話(あるいは女の子が好きな話パート2)

まずはこのPVを見てください。 大森靖子「愛してる.com」MusicClip 歌詞はこちら。 http://sp.uta-net.com/search/kashi.php?TID=202647 いかなる感想をお持ちになったでしょうか。 思い出してほしいのですが私は女の子が好きです。 rikka-6.hatenablog.com …

村上春樹が好きな話

以下は私が「村上春樹が好きです」と言ったときの相手の反応一覧です。 ・「えー、なんていうやつが好きなんですかー?」 ・「やっぱノルウェイの森?」 ・「私村上春樹嫌いなんですよね」 ・「やれやれ(笑)」 ・「……なんで?」 だいたいこのどれかに分類…

文学フリマ東京に出る話

忘れていたけど、ブログを始めたのは文フリの告知がしたいからだった。告知します。 第二十二回文学フリマ東京 開催日:2016年5月1日(日)11:00~17:00 会場:東京流通センター 第一展示場(東京モノレール「流通センター駅」徒歩2分) ブース:シ-15 サーク…

言葉が好きな話

女の子が好きな話を書いたらけっこう反応があって照れたので、元ネタというか、影響されたものがあるよという話を書きます。これです。 はらだ 有彩 - ”【第1話 日本のヤバい女の子】” http://apartment-home.net/column/201502-201503/%e3%80%90%e7%ac%ac1%…

女の子が好きな話

女の子が好き、と私が言うとき、思い出す女の子が二人いる。 一人は高校の同級生で、演劇をしたり映画に出たり写真のモデルをしたりしている。色が白くて姿勢が良く、二重をテープで作っている。私が彼女を知った15歳のときから9年、彼女は髪を切って二重に…